ポール・マッキャンドレスインタビュー

2010年1月、ポール・マッキャンドレス氏自宅にて。

(聞き手 古佐小基史)

 

Paul McCandless

: 私はこれまでに世界を旅して、あちこちを観てまわりながらレコーディングをして、君のようにエキサイティングな若い演奏家とも演奏してきた。

 

 私はオーボエやイングリッシュホーンなど少しばかり風変わりな楽器を専門としていて、それをジャズの即興などでクリエイティブに使う機会にも恵まれた。

 

 そういう点で君と私は多くの共通点がある。というのも、オーボエもイングリッシュホーンも、普通はジャズ楽器だと思われていない。でも、素晴らしい音が出るから、音楽の種類によっては、他のどの楽器よりもしっくりと響く。

 

 ハープ即興演奏者の君も、同じような感じだと思う。

 

 ハープもジャズ楽器だとは思われてないけど、君はハープそのものからわき出るような音楽をクリエイトする方法が分かっているようだ。ハープ本来の持ち味を生かして。ハープ自身の中に宿る音楽というか・・・とてもいい響きの音を出す。

 

 そしてふたりの要素を組み合わせると、素晴らしい音楽になる。素晴らしいつながりが持てる。

 

 君とのやりとりは楽しかった。伴奏者としても優れた即興演奏家だからね。だってソロをきちんと聴いてくれるだろう。みんなそうしてくれるとは限らないんだから(笑)。

 だから、本当にふたりで曲を作っているという感覚がある。曲が徐々に静まっていくのを互いに感じ取り、優雅にその部分を終わらせることができる。

 または、エネルギーを高めて、音楽に旅をさせ、音楽と共に我々も旅をする。

 

:君の音楽はいいね。親近感が持てる。私たちはまるで同じ言葉を話しているようだ。音楽でね、音楽の会話ということ。 

 

 君の書く音楽は作品によって持ち味が異なり、ファンキーなものから、ブルース、そして時には何かを求めているような、神秘的な、日本的な音階のものまで。

 

 ハープで君が演奏している音楽は尋常ではないほど幅広い上、君が奏でる会話はメロディックで、とても「歌える」ものが多い。

 

  曲を作る、即興するということでハープとやったのはこれが初めてだけど、とても上手くいっていると思う。 

 

 オーボエ、イングリッシュホーン、ソプラノサックス、ベースクラリネットのそれぞれが、ハープと親和性があり、素晴らしい組み合わせだし、新境地も見いだせる。

 

 新しいメロディをクリエイトする際、何か新しいものを初めて聞こうと努力する。そこには、詩的なビートがあり、意味を持ち得る韻を組み合わせながら、メロディックな即興で物語を語ろうとする。

 そんな風に私たちはやってるんだ。特にヨーロッパのジャズの影響はそんな感じで、ECMレーベルのミュージシャンの多くは、今までに演奏したことのないフレッシュなもの、新しいものを演奏しようと心がけている。

 新しいものはゆっくりとしたペースでしか生まれてこない。というのも、その瞬間毎に発見していかなくてはならないからね。メロディックなフレーバーで。本当の意味での即興だ。次に何が起こるかが全く分からないのは、とてもエキサイティング。自分が以前やったことのない方法での音楽だ。 

 

 即興のエッセンスを保ちつつ、毎回新しいものを生み出そうとする。そしてそれは音楽の表現として、私たちがどれほど楽器を上手く演奏できるかという技術を見せるのではなく、物語を語り、詩を読むことだ。ソロを生かしながら、それをまた別の境地へと導いてゆく・・・

 

 それは私のアプローチでもある。私が音楽をクリエイトする方法にとても似ている。

 

 君もその才能を持ってる。

 

 同世代のミュージシャンともよく演奏するけど、そういった音楽を聴いて注目してくれた若いミュージシャン、それも、独自の演奏ができるミュージシャンとやるのは楽しい。

 

 私たちの音楽は、特定のジャンルに興味を持っている人達だけでなく、もっと一般の人にも幅広くアピールする可能性がある。

 

(古佐小:本当にはジャズを聴いたことのないような人たちのことですか?)

 

:コンサートに来てくれた人は、私たちの音楽をとても気にいってくれるからね。ほとんどの人が。

 

 客席に座っている観客からとてもいい反応を感じる。「これはすごい!この音楽は、なんだか分からないけど本当にいい!」みたいな感じでね。

 

 たとえ本人の意志でそこにきたのではなくても、「来てよかった!」と感じてくれるようだ(笑)。

Paul McCandless.

 

翻訳:小倉悠加

(音楽ジャーナリスト)

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